<南風>不眠の認知行動療法


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 ある小さな講演会で「普天間先生の睡眠のお話は目からうろこで、いつもはっと目が覚める思いで聞かせてもらっています」と進行役の座長から過分な紹介をいただいた。ところが講演が始まって5分も経(た)たないうちに座長が居眠りを始めてしまった。私はお疲れの座長を起こさないように子守唄を唄うようなやさしい口調で講演を続けた。

 学会や講演会ではよくある微笑(ほほえ)ましい光景だが、睡眠薬を使わずに眠らせることは睡眠専門医の理想だ。睡眠薬が必要な場合も効果と副作用のバランスを考慮してなるべく害の少ない薬を必要最小限で適正使用したいものだ。

 不眠症治療では薬剤を必要最小限とするために非薬物療法も重要である。「不眠の認知行動療法」は不眠の原因となっている生活習慣や思考パターンを修正する精神療法だ。具体的には睡眠衛生指導、漸進的筋弛緩法、刺激制御法、睡眠制限法、認知療法などを組み合わせたパッケージとなっている。私は外来の限られた時間で可能な限りこれらのエッセンスを取り入れているが、現在、日本では保険適応外で実施可能な人材や施設も限られている。

 このような状況でサスメド株式会社が開発中の不眠治療のスマホアプリ「yawn」には期待している。患者はアプリに毎日の睡眠時間やその日の行動などを入力していく。これらのデータを解析し認知行動療法に基づいた対処法を提示することで不眠の改善を図る。現在は治験中だがサスメドは2020年を目処(めど)に医療機器の承認を得て、医師が患者に処方するアプリを目指している。

 話は変わって来月、本部町主催の市民講座で健康と眠りに関する講演を行います。11月7日午後3時から本部高校の体育館でどなたでも無料で参加できます。お問い合わせは本部町役場保健予防課。
(普天間国博、嬉野が丘サマリヤ人病院 睡眠専門医・医学博士)