<南風>多彩なオキナワ


社会
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 もう半年以上前のことだが、3月に那覇にあるアトリエ銘苅ベースでトーク企画をやった。ボリビアのオキナワ移住地を訪ねたときのことを話す、というもの。

 オキナワ移住地は60年以上の歴史を持つ。そこに住む若者たちは日本語をしゃべり、イントネーションは沖縄のそれと変わりない。若者の一人は「ぼくたちは沖縄にずっと憧れていたけど、いざ行ってみたら、沖縄の人は自分たちの存在を知らない人が多くてショックだった」と言っていた。というような話をしたり、そのとき撮った写真をスクリーンに写したりした。

 トークのあと、参加者の人たちと一緒にアサードをやった。アサードとは、アルゼンチンやパラグアイなどでよく家族で集まってする焼肉のこと。わたしが一年間アルゼンチンに住んでいたこともあり、やることになった。ボリビアやアルゼンチン、ペルーに住む日系人の6、7割は沖縄出身者と言われる。

 アサードには赤身の牛肉とチョリソ(豚肉のソーセージ)が欠かせない。だが、日本で流通しているチョリソは太さや味が南米のそれとはまったく違うんだよなあ、と思っていたら、今帰仁にチョリソを作っているところがあると、浦添市にあるアルゼンチン料理屋で聞いた。沖縄に「再移住」してきた人たちの間では、時折集まってアサードをすることがあるそうだ。

 さっそくチョリソを買いに今帰仁へ行き、お店の人とスペイン語でアルゼンチンの話を少しした。アルゼンチン訛(なま)りのスペイン語を久しぶりに聞くことができて、うれしかった。

 そんなチョリソを食べて泡盛を飲んで、沖縄の多様さに思いをはせた。

 その豊かさをもっと知ってほしい。県内のみならず県外の人たちにも。そんな思いもあって、同じような企画を内地でもやろうと、いま準備しているところ。
(神里雄大、作家・舞台演出家)