<南風>「カンドラの秋」


社会
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 宜野座村にある漢那ドライブインで開催中のアート展「カンドラの秋」に私も参加している。

 1日から始まったこのアート展を企画したのは、漢那ドライブインアートプロジェクト実行委員会、通称「KDAP」。

 今年4月から5月に第1回アート展「ぼくたちの記憶」、そして8月から9月には「ぼくたちの台湾展」を開催し、今回が3回目の企画展になる。

 漢那ドライブインは、一昨年、40年以上の営業に終止符を打った。その間、オーナーが代わったり、国道が移動しても建物は同じ場所に建ち続けた。

 KDAP代表の仲栄真三七十(みなと)さんの本職はモズク漁師だ。ドライブインに1年分のモズクを卸し、その代金を食券でもらい、それを使って家族で食事をするのが楽しみだったという。

 そんな仲栄真さんが、去年、建物の一部を借り「モヒカンコーヒー」をはじめた。窓越しに販売する週末だけのコーヒー店だ。

 「レストランは閉店」と張り紙をしてもお客さんはやって来て「うな重を食べに来たのに」と残念がられたり、「なんでやってない?」と叱られたりするそうだ。「カンドラ」が刻んだ時は、多くの人の記憶に残り、そう簡単には消えない。

 ホールや座敷などを見たアート関係者が「このスペースを使って何かできるのではないか」と話し合いKDAPがスタートした。

 店内から見える海。その向こうに伊計島や宮城島、平安座島が並んでいる。角部屋の大きなガラス窓二面に切り紙を飾り、襖(ふすま)にはワークショップに参加した人たちの作品が日を追うごとに増えていく。

 ドライブインの建物としての寿命はあと数年だそうだ。建物がなくなったあとに、コーヒーの香りとともに、窓いっぱいに広がった切り紙の花が誰かの思い出になっていたらうれしい。
(新川美千代、切り紙作家)