<南風>楽園のこちら側

 高校時代、野球部に所属していた。幽霊部員だったが気が向いたときに練習もした。グラウンドは暑いので、校舎の日陰でキャッチボールをした。走り込みなどしたことがない。試合前はファミスタでイメトレした。部員が6人しかいないので剣道部やテニス部から助っ人が呼ばれた。私は坊主頭で試合に臨んだが、助っ人は野球帽から後ろ髪をなびかせてプレーしていた。

 私が一つ自信を持って言えるのは県内で一番弱い野球部だったということだ。関係者に怒られそうなので校名は書かないでおく。一度、甲子園常連の強豪と対戦して0―25で負けた。3回コールドだった。

 もう一つだけ別の試合ではっきり覚えていることがある。相手の強豪校はみんなよく日焼けしたたくましい体つきをしていた。対する我々は色白で痩せたもやしっ子だ。試合前に両校の選手が一列に並んで礼を交わすときに客席から「黒人対白人」とヤジが飛んだ。球場が爽やかな笑いに包まれて夏の暑さも和らいだ(こんな時代なので人種差別ではないと断っておく)。

 弱小野球部が甲子園を目指す物語は多いが、私は別に強くなりたいと思ってなかったので救いようがなかった。思い直してみれば野球よりもサッカーが好きだった。友達が野球部に入ったので一緒に入部してみたら少し野球が好きになった。本気で野球に取り組んでいた人には申し訳ないが、こんな野球部が一つぐらいあってもいいと思う。そこにパワハラや陰湿ないじめはなかった。

 プロ、アマ問わずスポーツに関する不祥事は絶えない。勝利至上主義の弊害は勝負の世界の宿命ともいえよう。某大学アメフト部監督の悪質ファウルの指示は漫画「地獄甲子園」や「狂人軍」を彷彿(ほうふつ)とさせた。そんな世界の対極に勝敗の枠を超えた楽園もあるのかもしれない。
(普天間国博、嬉野が丘サマリヤ人病院 睡眠専門医・医学博士)



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