<南風>海外遠征


社会
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 2017年11月10日に初の海外遠征を行った。スポーツは基本的にはホーム試合にアドバンテージがある。移動・時差・食事・気候・応援サポート体制などの面が有利と考えられる。特に移動に関しては、ボクサーは減量が佳境を迎えている時期での移動となる。飛行機での長時間移動は体力を消耗する。移動中に落ちる体重も計算し、最終調整を行う。反対に、ホームでの試合は最後まで自分のペースを維持して調整することができる。これが大きなアドバンテージといえる。

 私の初海外遠征先は、フィリピンのパラワン島だった。当時、14戦のうち8戦がアウェーでの試合だったので、緊張よりも初の海外での試合にワクワクドキドキしたのを覚えている。機内での体重が気になり飲食はほとんどしない。機内食は見て満足する。食べるのはトレーナー。ただひたすら目を閉じ、マスクをかけて音楽を聴き時間をやり過ごしていた。体はしんどいが、なぜか気持ちは楽だった。それは、言葉も通じず、自分のことを知っている人がいない場所で試合をすることに、一種の開放感を感じていたからだ。

 リラックスした気持ちで乗り込んだパラワン島では、町中に試合ポスターが大きな看板になって掲げられていた。一歩路地裏に入ると砂利道が続き、まだまだ整備されていない街の姿、裕福とは言えない家屋が並んでいる町並みが見られた。娯楽の少ない島で、多くの人たちが楽しみにしているボクシングイベントであることがうかがえた。試合は悔しくもドローであったが、この海外遠征を通して、海外に行かなければわからない日本・沖縄の良さや地元で試合ができる有り難さを痛感し、ボクサーとして実のある経験をさせてもらった。パスポートの期限が切れないうちに、再び海外遠征に挑戦し勝利を持ち帰りたい。
(平安山裕子、OPBF東洋バンタム級女王)