<南風>組踊の魅力広める手立て


社会
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 来年は組踊の誕生から300年。沖縄に来るまで組踊についての知識はゼロでしたが、「朝薫五番」などの人気演目に足を運ぶうちに段々はまってきました。台詞と音楽と踊りが調和する世界はまるでオペラかミュージカル。愛憎劇や復讐物など三面記事的な題材が多いのもオペラと同じです。それに国立劇場おきなわの字幕は実に見やすく、私のような県外出身者には助かります。

 ただ客層は大体地元の年配の方が中心で、観光客らしき姿はあまり見かけません。国立劇場の組踊公演は月2、3回ですから、沖縄に来たついでにみようと思っても確かに簡単ではありません。かといって平均入場率約7割の現状では、上演を増やせたとしても供給過多になりかねません。やはりもっとPRしてファンの裾野を広げる必要がありそうです。

 思い切って「沖縄版オペラ」として売り出せば、海外、特に舞台芸術が盛んな欧米の観光客は関心を示すのではないでしょうか。「表現しない表現」とも評される組踊独特の控え目な感情表現はかえって新鮮に映るかもしれません(能も海外公演では日本人が想像するよりはるかに人気を集めるといいます)。しかし、国際通りの観光案内所をのぞいてみると外国人向けのパンフレットは宿泊や飲食関連がほとんど。オペラの本場、イタリア語版の冊子まであるのに組踊の写真すら載っていません。これではもったいない気がします。

 外国人であれ日本人であれ、とにかくまずは一度見てもらうこと。初心者に打って付けの「組踊版・シンデレラ」のような傑作も上演されています。来年は沖縄局の長寿番組「沖縄の歌と踊り」の放送開始50年の節目でもあります。この番組も活用して組踊300年をどう盛り上げていくのか、私たちも知恵を絞り始めています。
(傍田賢治、NHK沖縄放送局局長)