<南風>好きなことに取り組む


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 若狭公民館の取り組みを見て「アーティストの館長は発想が違うね」と言われることがある。私が沖縄芸大出身で、かつてアートNPOで活動していたことを知っている方から、ユニークな事業を評価する際に言われる言葉だ。

 しかし、公民館事業で私が発案したものはごく一部。ほとんどが誰かとの会話で立ち上がった企画だ。さらにアーティストではないので余計に恐縮してしまう。

 彫刻を専攻した学生時代、対象をさまざまな角度から立体的に見て、その本質を探ることを学んだ。また、アーティストたちとの付き合いから、イメージを具現化するためにあらゆる可能性を探り、試行錯誤を繰り返しながらカタチにしていく情熱と実行力に刺激を受けた。

 常識を疑い、既成概念を壊し、本質を追求し、新しい価値を提案する。まだ評価の定まっていない表現は「わけがわからないもの」と理解されることも多い。だが、多様な価値観を受け入れ、未来を創造する「アート」は、私の公民館での取り組みの基礎をつくってくれたと感じている。

 学生時代もアートNPOで活動していた頃も、この学びや経験が公民館や社会教育活動で役に立つとは思っていなかった。それ以前に、公民館職員になることも想像できなかった。

 子どもたちに「夢は」と問うと、職業を答える子が多い。目標を設定して、努力することを大人が推奨しているように感じる。だが、それによって視野を狭めてはいないだろうか。さまざまな経験から視野を広げ、自らの興味や関心を掘り下げ、試行錯誤することこそが大事だと思う。好きなことに本気で取り組む。純粋な思いから出てきた行動は強い。そこで得た気づきや学びは代え難く、それが自分の将来や社会と繋(つな)がっていることを意識させることが大人の務めだと感じている。
(宮城潤、那覇市若狭公民館館長)