<南風>「遅寝早起き」のすすめ?


社会
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 「早寝早起き朝ごはん」は2006年に文科省が推進した国民運動だ。一方で14年に厚労省が作成した「睡眠12箇条」の第10条には「遅寝早起き」というキーワードが出てくる。必要な睡眠時間は年齢や個人の状況によって異なる。そのため若者は「早寝早起き」が理想だが、長く眠れない高齢者や不眠症患者は「遅寝早起き」が有効なことがある。

 不眠症患者は少しでも長く眠ろうと臥床時間が極端に長くなる傾向があるが、「早寝遅起き」は逆効果だ。例えば頑張っても4~5時間しか眠れない人が10時間も臥床すると眠れない時間の方が長くなってしまう。ベッド上で眠れない時間は精神的苦痛のため自覚的には何倍にも長く感じる。その結果、実際に数時間は眠れていても「ほとんど眠れない」と感じてしまうのが「逆説性不眠」だ。こうなると睡眠薬の自覚的効果は乏しくなる。

 5時間以上眠れなければ「遅寝早起き」で臥床時間を6時間に短縮しても良い。これは「睡眠制限法」と呼ばれており、ベッド上で眠れない時間を減らすことでストレスを軽減できる。途中で目が覚めて再入眠できないときは、いったん寝室から離れてリラックスできる気分転換をはかり「眠くなってからベッドに入る」ことも重要である。寝室ではテレビやスマホなどブルーライトや興奮が高まる刺激は避け、「ベッドは眠るときのみ使用する」というのが基本で、これは「刺激制御法」と呼ばれている。臥床時間の短縮は「眠気を貯(た)める」効果もある。夜まで眠気を貯めるには起床時間を遅らせず日中の活動性を高めて昼寝は20分以内に抑えたい。

 このような「遅寝早起き」はあくまでも不眠の対策である。健常な若者は睡眠負債をため込まないように「早寝早起き」で十分な睡眠時間を確保すべきことを念押ししたい。

(普天間国博、嬉野が丘サマリヤ人病院 睡眠専門医・医学博士)