<南風>豊かな未来創るためには


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 若狭公民館の特徴的な事業に、おかず一品持ち寄りの「朝食会」がある。公民館の新たな活用方法を考えるワークショップから生まれた。当時30歳前後で独身だった発案者たちは、今は子連れで参加するようになっている。月に1回、おかずを持ち寄り一緒に食べる、それだけのことだが12年も継続しており、ここから「100人でだるまさんがころんだ」などのユニークな事業も生まれてきた。

 朝食会のモットーは「がんばらない」。世の中には面白い取り組みがたくさんあるが、注目を集めたものの数年以内でいつの間にかなくなっているということがよくある。派手に花火を打ち上げるよりも地道に継続することに意義があると、無理して息切れしないように「がんばらない」「入りやすくて抜けやすい」スタンスを貫き通している。

 地域活性化を掲げたイベントで聞くのが、関係者の疲弊だ。人・モノ・金が不十分な中、より良いものを作ろうと無理してしまう。それが不満となって同じ思いを持って集まったはずの仲間がけんかしてしまうこともある。イベントは成功したように見えても、内部の関係性が壊れてしまっては元も子もない。イベントというハレの場は何のためにあるのか、それを行うことによって、その後も続く日常にどのような影響をもたらしたいのか、成果や波及効果をイメージすることで取り組み方が変わってくる。地域“活性化”という言葉も曲者(くせもの)だ。にぎわい創出を至上命令として来場者数などの数字だけを評価指標にするとその質を見落としてしまうこともある。

 これからの人口減少社会、高度経済成長期のような右肩上がりの価値観は通用しない。オリンピック、万博など大きな事業のその後が不安だ。私たちの取り組みは小さくても豊かな未来を創るために少しずつ積み上げていきたい。
(宮城 潤、那覇市若狭公民館館長)