<南風>クリスマスの贈り物


社会
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 子どもの頃、コザ市(現沖縄市)の琉米親善センターの隣に住んでいた。2階建ての建物の1階には大ホール、2階には「親善センター図書室」があった。

 そこは私のお気に入りの場所で、一人でもよく遊びに行った。

 私には大切にしている本がある。それは『世界の名作図書館5・ピノッキオ、ピーター・パン』(講談社・1966年)だ。青い表紙で、子どもの手には重い厚手の本だ。カバーは残念ながら破れてしまったが、そのイメージや感触は今も残っている。

 その本は、父からのクリスマスプレゼントだった。

 父は帰宅すると、毎晩ベッドの側でその物語を読んでくれた。「はい、今日はここまで」と言われると「もっと読んで」とお願いしたり、いつの間にか朝になっていたり、そんなことをこの本を手にすると思い出す。同時に、母が焼いてくれたホットケーキの香りまでもがよみがえってくるから不思議だ。

 ピノッキオもピーター・パンも冒険がいっぱい詰まった物語だ。目次を見るとピノッキオは36話、ピーター・パンは17話まである。それを1話ずつ読んでもらい、文字が読めるようになると本を膝の上に置き、一人で何度も読んだ。

 子ども時代の本は他にも数冊残っている。その中でも、この本は、家族の時間を凝縮したような特別なもので、これから先も手放すことはないと思う。

 時がたち、その本を息子に読み聞かせる日が巡ってきた。子どもの頃、ピーター・パンやウェンディたちと一緒に飛んだあの星空を息子も一緒に飛んだ。

 本の読み聞かせのボランティアでもこの本を読むことがある。目を輝かせ、お話の世界を楽しんでいる子どもたちの顔。それはあの時の私に違いない。

 12月15日、新しい県立図書館がオープンする。
(新川美千代、切り紙作家)