<南風>ハングリーであり続ける


社会
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 プロボクサーは、けがなどをしなければ3~4カ月に1回のペースで試合をする。年に3、4試合を戦う。試合オフ期は、試合でのダメージや減量での内蔵疲労などからの回復をはかる。

 フィリピンやタイのボクサーはファイトマネーが生活の収入源である。日本のボクサーよりも試合数が多く、2カ月に1度のペースで試合をするボクサーも多い。ハングリー精神についてよく語られるが、彼らは試合をして生計を立てているから、試合に対しても勝利に対しても貪欲だ。ハングリー精神の塊である。

 日本のプロボクサーたちは私も含め、ほとんどが仕事を持ちながらボクサーをしている。仕事をしながら試合に出るのは、職場の理解がいる。合宿時や試合前は休みを取ることも多いし、けがのリスクもある。

 私は、ボクシングを始める以前からコンビニで働かせていただいている。10年以上も続けてこられたのは、職場環境に恵まれているからに他ならない。たまに「たくさん食べ物がある職場にいて減量大変じゃない」と聞かれるが、もちろんきつい。接客中は特にのどが渇くから、すきを見てうがいをしてのどの渇きをごまかしている。そんなとき、仲間や常連のお客さんから「がんばって」と声を掛けられると励みになる。試合のときには、職場の仲間たちが応援に駆け付けてくれる。本当に感謝している。周囲の理解とサポートがあってこそ、この道を続けられているのだ。

 最近「ハングリーさがなくなった」とよく聞く。それは物質的に豊かになったとか、生活にゆとりがあるといった外側からの判断であり、実はボクサーは皆内面にハングリーさを持っていると思う。仕事とボクシングの両立に対し、周囲からサポートや応援を受け、それが勝利への原動力になっているのだから、勝利への渇望が尽きることはない。

(平安山裕子、OPBF東洋バンタム級女王)