<南風>沖縄の睡眠医療の総括と展望


社会
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 沖縄は睡眠関連呼吸障害に関して他県よりも充実した環境が整っていた。名嘉村クリニックの名嘉村博院長は日本で最初に沖縄で睡眠時無呼吸の専門施設を立ち上げた。南風原町のサマリヤ人病院でも2年前に山城義広院長が睡眠専門外来を開設した。お二人とも呼吸器内科で国内屈指の睡眠時無呼吸のスペシャリストである。

 睡眠障害で最も多いのが心理的サポートが必要な不眠症やリズム障害である。数年前まで沖縄には睡眠専門の精神科医は不在であった。睡眠医療は精神科、内科、耳鼻科、歯科など各分野の専門家が連携する総合医療である。そのため私は睡眠を専門とする精神科医を志し7年前に上京した。その間に東京医科歯科大学名誉教授の松浦雅人先生が沖縄に移住された。睡眠中の異常行動は「睡眠時随伴症」と「てんかん」の鑑別が重要だが、てんかんの権威で睡眠にも精通した松浦先生に声をかけていただき沖縄に戻ることを決めた。

 沖縄の睡眠医療は次のステージへ発展する段階に来ている。特に不眠症治療はパラダイムシフトが起きつつある。従来型の睡眠薬は「不適切使用」により依存リスクのみならず高齢者の転倒・骨折、誤嚥(ごえん)性肺炎、せん妄発症リスクなどが大きな問題であった。しかしこの10年間で副作用の少ない新薬も複数登場し、不眠の認知行動療法の有効性も認められるようになってきた。

 かつて沖縄県立中部病院が全国に先駆けて抗菌薬の適正使用を普及させたように私も沖縄で睡眠薬の適正使用の普及に貢献していきたい。その一環で「南風」の執筆も引き受けた。時に睡眠と全く関係ない話題もあったが、このコラムが睡眠障害の「言葉の処方箋」となるように心掛けた。今回が最終回となるが、最後に琉球新報とその読者である皆さまへのお礼で締めくくりたい。
(普天間国博、嬉野が丘サマリヤ人病院 睡眠専門医・医学博士)