<南風>イモムシ奇譚

 ある日、私と妻そして娘の家族3人…死んでしまいまして…。そうして、私たちは巨大な掃除機に吸い込まれ、気がつくと天国。天国は、まるでデパートのようで、さまざまな店舗が並び、各店舗の入口には、家庭用薄型テレビが設置されておりました。

 テレビからは戦争の映像が流れ、天使が言いました。「戦争は神様の娯楽だよ」。しかし、戦争のたび、天使たちは事務作業におわれるため、迷惑であると…。

 私も妻も娘も、天国に少し慣れてきた頃、急に私だけ呼びだされ、天使にこう伝えられました。「良かったですね。あなた一人、また生きて現世でやっていけますよ。まずはイモムシとなって」「じゃあ再び家族3人そろうことは」「厳しいかと…」「じゃあ結構です。家族で天国に残ります」「一応、決まりなので」。再び私は掃除機に吸われ現世へ。

 「やめろ。忘れるもんか。イモムシになっても、家族のことは」。娘の名前を叫び続けました。何度も何度も。そのうち声が出なくなり…まぶたが重くなり…意識が…。ハッと暗闇の中にいました。

 「そうか、私はイモムシに。すると、ここは卵の中」。殻を蹴破ろうとすると、案外柔らかく、まるで布団みたいで…布団?スースーとかすかに聞こえる懐かしい息づかい。「寝息。誰かが隣りで寝ている」。そこは卵の中ではなく、普段の寝室。布団をかぶりスヤスヤ眠る妻と娘。「えっ、てことは、天国は…夢か。本当に良かった」。あふれ出る涙が止まらない。

 その瞬間。ビクーン。ガクーン。足がつった。痛い。「えっ」。次に目を開けると、私はソファの上。日は高く昇り、妻は既に娘を連れ保育園に。テレビでは「あまたつ~」と天気予報。私はあくびをしながら夢のまた夢から目ざめました。

 さあ、コラム南風…何を書こう。

(上原圭太、漫才コンビ・プロパン7)



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