<南風>映画の力


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 コザ(沖縄市)に小さなカフェシアターを立ち上げてもうすぐ4年がたとうとしている。愉快な仕事仲間たちと空き店舗を改装して作ったのだ。名前は「シアタードーナツ」。客席には映画を上映するための120インチスクリーンと20席程度のいすやソファとテーブルがある。手作りのドーナツを販売している。さらに、店主がやたらとお客さんに話しかけてくる。それは私だ。

 私を成長させてくれたのは、映画であると断言できる。映画はさまざまな景色と人間の立場や環境で生きる人々が存在する事を教えてくれる。

 さらに、歴史や時間の価値を改めて実感させてくれる。作品に対する感じ方は十人十色。感想を誰かに伝えることで、お互いに好奇心を高め合ったり、新たな趣味が生まれることだってあるだろう。これまでの生き方を変えるほどの“気づき”まで与えてくれる。映画にはそんな力がある。

 映画は作られた時が完成ではなく、誰かに見てもらって初めて完成だ。私は「月に1度は映画館で映画を見よう」という提案を発信している。なぜ、映画館なのか。自宅でDVDや、出先でもスマホで映画を楽しめる時代だ。私もしばしば利用する。でも、私はそれを映画“鑑賞”とは呼ばない。それは単なる“チェック”だ。便利な時代ではあるが、作品の価値を下げてはいないか。文化を育む想像力を失ってはいないか。作り手は劇場で見てほしいはずだと、そこまで考えて映画を見る必要はないが、映画館で作品に向き合う時間は尊い。それは暗闇の中で自分自身と向き合う時間でもあるからだ。

 シアターをオープンし過ごした時間の中で映画に対する発見が本当に増えた。“鑑賞”を終えた客が余韻に浸りながら、満足した表情を浮かべていたら、私は最高の気持ちになる。私の仕事は映画を届けること。

(宮島真一、カフェ映画館「シアタードーナツ」経営)