<南風>囲炉裏のある宿


社会
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 介護者不足で、3年前に伊江島から宜野湾市に移り住んだ私は、最近無性に島が懐かしく感じられるこの頃である。

 今年は島で新年を迎えることになり、年末から「土の宿」の客になった。宿には古い流木で作った囲炉裏がある。枝木のけむる香りの中で、私は忘れていた母の温もりにも似たものを感じた。

 暖かい沖縄なのになぜ囲炉裏なのかとよく聞かれる。囲炉裏を囲み火を見ていることで、憎しみあっていた人も穏やかな心になり、和解することができる。火にはそのような不思議な力があるのを感じる。

 土の宿は、私たちに心の平和をもたらす場所だと私は思う。平和な伊江島であってほしい、農薬の公害や戦争の恐れのない安心して子育てもできる島であってほしいと願い、再会を願いつつタッチュー(城山)をあとにした。

 昨年春、私はひ孫に恵まれた。とても元気な可愛い男の子である。安心して子供を育てられない国に明るい未来は存在しないと誰かが言っていた。

 普天間第二小学校と緑ヶ丘保育園に米軍機から部品や巨大な窓枠が落とされた事件から1年が過ぎた。幸いにも一人の犠牲者もなかったが、なんと危険な日々の生活なのだろう。

 さまざまな理由を付け殺し合い奪い合おうとする国や人々、その傘の下にいるバッジを付けたやからたちよ。奪い取った富はいらない。民意を無視して何をしたいのか。理由付けや言い訳はもう聞きたくない。

 県民投票も近くなってきた。身近な問題を沖縄の魂と優しさで考え、自分たちで決められるチャンスだと思う。可愛(かわい)いひ孫たちのために、安心して鳥だけが飛ぶ青い空に、碧(あお)い静かな海にしたい。

ジュゴンちゃんが 可哀想(かわいそう)ネと 呟(つぶや)きつつ 眠るあなたの 見る夢はな~に
(木村浩子 歌人、画家)