<南風>喫茶店「あまじ」


社会
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 「ご注文はお決まりですか? クリームソーダお二つですね」

 喫茶店「あまじ」のオーナーは10歳の私。妹二人を従え、飲み物とお菓子をすてきな器に盛り付けて両親や親戚をもてなしたあの頃。大きな段ボールで丸テーブルと椅子を作り、テーブルにはレースのクロスを掛け、庭からつんできた色とりどりの花を飾った。BGMはベートーベンの交響曲「田園」を。三姉妹の名前の頭文字を並べた「あまじ」という店名も、今思えば単純で、思い出すたびに思わずクスッと笑ってしまう。お気に入りの遊びだった喫茶店ごっこは今につながる原点だったに違いない。

 器道楽の母に連れられて、物心ついた頃から壺屋や読谷の窯出しへ、有田、九谷と日本各地の名陶を訪れたのも懐かしい思い出だ。明らかに母のDNAを受け継いだ私は、スチュワーデス時代にも世界各地の食器をたくさん持ち帰った。バッグやアクセサリーを買い求めるよりも器との出合いに胸が高鳴った。

 結婚後、東京から沖縄に住を移し娘を出産。しばらくしておばの誘いでテーブルコーディネートスクールに通うことになり、東京を往復すること1年余り、テーブルコーディネーターの資格を取得した。周囲の口添えもあって、気が付けば「食空間コーディネーター」という肩書を持つようになっていた。私のビジョンには無かった職業だが早20年、器好き、料理好き、そしておもてなし好きな私にとって天職だと言えよう。多くの方に支えられ、好きなことを仕事にできる幸せに感謝する今日この頃だ。

 来月3~11日 東京ドームにて「テーブルウェアフェスティバル暮らしを彩る器展」が開催される。9日間の動員数がなんと30万人! 世界中の器が一堂に会するビッグなイベントに携わらせていただいて6年目になる。
(大木綾子、食空間コーディネーター)