<南風>九州国立博物館


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 九州国立博物館(以下、九博)は福岡県太宰府市にあります。すぐ近くの太宰府天満宮は学問の神様・菅原道真を祭っていて、今の季節は合格祈願の受験生でにぎわっています。

 九博は2005(平成17)年10月、東京、京都、奈良に続く4番目の国立博物館として開館しました。開館から半年後、福岡局も主催に加わって開催したのが「うるま ちゅら島 琉球展」です。開催中に私は福岡局の広報事業部長に異動し、初めて展覧会の主催を経験しました。放送でPRしたこともあって「沖縄モノは受けない」とのジンクスをはねのけて、18万人近い入場者を記録。当時の稲嶺恵一知事から沖縄文化の発信に貢献したと感謝状をいただきました。

 博物館の仕事は展覧会だけではありません。文化財の保存・修復も重要な業務です。九博には、絵の具が剥がれた襖(ふすま)絵や木が朽ちた仏像など、痛々しい文化財が持ち込まれます。

 琉球王国ゆかりの国宝・尚家文書は、虫食い跡などの修復に取り掛かって今年で10年です。竹紙と芭蕉紙、それに和紙の3種類の紙が使われていて、それぞれ中国、王国内部、そして薩摩関係と考えられています。修復には文書の紙質と同じ材料の繊維を使います。紙の繊維を漉(こ)くことから始まる、時間と手間のかかる根気のいる手作業です。

 文書は全部で1166点。ページに換算すると15万枚を超える膨大なもの。10年かけて修復できたのは2割ほど。全部が終わるのには30年かかるといいます。

 作業を担当するのは、多くは20~30代の人たちです。高温多湿の気候の中で、日本の文化財は傷んだ部分の補修を繰り返しながら、歴史の荒波を乗り越えてきました。技を継承し、文化財とともに次の世代へ守り伝えていく。黙々と作業に取り組む若い人たちの姿が、まぶしく感じられました。

(繁竹治顕、九州国立博物館振興財団専務理事)