<南風>土の表情


社会
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 1月21日、予定通りうるま市石川にある穴窯の窯出しをした。思っていた以上にだめだった。窯出しの日は、朝から一緒に焚(た)いた6人で作業を始めた。穴窯の焚き口に積んであるレンガを崩し、手前にある器が灰をかぶって溶けているのが見えてくる。穴窯は奥から順番に一人ずつ詰めていくのだが、私は今回奥から二番目に詰めていた。

 焚き口にいちばん近いところが最も温度が上がるため、高い温度でも耐えられる土で作る。奥にいくほど温度が上がらなくても締まる土を選び作るのだが、手前に詰めていたものでさえ焼け方が甘いことがすぐにわかった。それは奥にあるすべてが十分に焼けてないことを意味していた。

 手前から二番目、三番目…、それぞれが自分のものを取り出していく。そして、自分の器と対面したのだが、自分の考えていたところまでまったく焼けていなかった。窯の中の温度が極端に低く、焼く時間も足りていなかった。一緒に作業を見守ってくれていた先輩は、焚いているときからこうなることを見据えていたのだろう。それでも私たちに任せ、身をもって体感することでの学びを与えてくれたのだった。

 今回この窯焚きでは私は恩納村谷茶の土を使っていた。粘土質が強く、石も混ざっているような扱いづらい原土である。市販されている精製された土は形もそろえられ扱いやすいのだが、それだけではつまらないと感じ、あえてこうして原土をブレンドしている。土の風合いや火の加減によってできた自然なムラこそが、飾りけはないが表情豊かなものに思えるのだ。

 前回芸大の登り窯で焚いたときには紫黒色のような色を生み出し、今回はどのような表情を見せるのか見てみたかったが、それはかなわずに終わってしまった。次こそ焚きあがった土の表情を見てみたい。
(山本憲卓、陶芸家)