<南風>「カメジローさん知ってますか」


社会
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 ここ数年、ありがたいことに県内の大学・専門学校・高等学校などで私が生業としているシアタードーナツについて職業講話をする機会が増えてきた。ある大学では「シアターが地域にできる“ささやかなこと”」というタイトルで話をした。

 「上映する作品を決める基準はあるのですか」という質問がよくある。私は講話の流れで、その都度上映している作品の予告編を見ていただく。例えば認知症と音楽の関係をテーマにした映画『パーソナル・ソング』なら、その作品は誰に見てもらうことで喜ばれるのか、どんなコミュニティーに紹介したら興味を示してくれるのか、という問いを受講者に投げかけ一緒に考える。そうすると介護や医療関係に携わる方や、ミュージシャンなど、客層が見えてくる。作品の届け先を探す作業をすることで、テーマの需要度を見つめるのだ。

 次に映画『米軍が最も恐れた男 その名は、カメジロー』を紹介すると「年配の方なら懐かしんで見てくれる」という返事があった。なるほどと思いつつ、私は学生たちに「瀬長亀次郎さんを知っていますか?」とたずねると、ほぼ知らないということが分かった。映画の存在さえも…。大変ショックだった。しかし、実は私も彼らと同じ年の頃にカメジローさんのことは知らなかった。戦後の沖縄の歴史を語るのに不可欠な彼の存在を、全く知らないのでは、沖縄の現状を考える時の大きなヒントを失うのではないか? と、強く感じた。カメジローさんのことを知るということだけでさまざまなことが見えてくるこの作品。あなたなら誰に見てほしいですか?

 作品が持つメッセージが鑑賞者の「考える力」を育んでくれるはずだ。その力があらゆる場面で「気づき」に変わるだろう。私は映画の力を借りてコミュニケーション豊かな未来を願う。
(宮島真一、カフェ映画館「シアタードーナツ」経営)