<南風>T高校で


社会
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 私の住んでいる町にT高校がある。放課後や休み時間に制服の若者を近くのパン屋やコンビニなどでよく見掛ける。

 車椅子の私を見ると、最初は変なオバアだと思うらしく、怪訝(けげん)そうな顔をしたり見て見ぬふりをしたりする。顔を背けられたり見ないふりをされたりするのは慣れているので気にはしていなかったが、最近は、笑顔で声を掛けてくれるようになっている。それが私にはとてもうれしい。

 「今時の若い者は」と批判されがちな彼らだが、私はT高校の彼らや彼女たちの純粋な優しさに触れ、批判を受けるべきは大人の私たちだと思う。私たちは彼らに何を残そうとしているのだろう。

 目先の欲で、大切な沖縄の美しい海を赤い血の色に染めてはならない。他国に「魂」まで売ろうとしているのは大人なのだ。そう考えると心は痛さでいっぱいだ。世界に誇れるほどの美しい沖縄の海を、そして琉球時代から受け継がれている沖縄の優しさとたくましさという「魂」を、忘れてはならない。それを示すチャンスが今回行われる県民投票だと私は思う。

 昨年12月、恒例の学園祭がT高校で行われた、若い彼らの数々の催しものには目を見張るばかりだった。いよいよフィナーレになった時、隣にいた制服のグループの一人が「僕らは2年生なので来年もいるから、必要なら手伝うのでまたおいでね」と言ってくれた。この人たちこそ沖縄の心の持ち主であり、やがて選挙権保持者となる。

 今回、ハンガーストライキまでして辺野古問題について私たち大人に問い掛け、訴え掛けてくれた元山仁士郎君に感謝しなければならない。勇気と希望を、同じ世代の若者たちにも与えたことは、近年にない得難い事実だ。私は沖縄の若者たちに代わって「元山君、ありがとう」と叫びたい。
(木村浩子 歌人、画家)