<南風>スコッチ、泡盛、それにウコン


社会
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 「えっ!こんな酒を飲んでいいんですか」。まだパレットくもじが建設中の頃です。足場の下で営業していた焼鳥屋で出てきたのは、本土の酒屋で買えば当時1万円前後もした高級スコッチでした。一緒に行った那覇市役所の職員がキープしたボトルで、大衆酒場には場違いな飲み物にびっくりした次第です。

 「泡盛は飲まないのですか」とたずねたら、「こっちの方がはるかにうまいサ」との返事。その頃は松山のスナックでも、大半はスコッチだったように思います。今は本土でも安くなりましたが、特別措置で国産ウィスキーと変わらない値段で買えましたから、のん兵衛の記者にとっては、こんなに嬉(うれ)しいことはありませんでした。

 東京勤務を経て、1995(平成7)年の異動は2回目の沖縄勤務でした。一緒に転勤したのが座間味局長と山谷放送部長。その時はすっかり泡盛が定着していました。

 初めての沖縄生活となった座間味局長は、故郷愛に目覚めて「泡盛はうまい」とご満悦。確かに、味も香りも随分マイルドになり、飲みやすくなっていました。

 半年ぐらい経(た)った時の事です。健康診断を受けた山谷部長が「γ-GTPの数値が下がった」と大喜びです。当時流行(はや)っていたのが、泡盛のうっちん割りでした。「これだけ毎日飲んでいるのに」とウコンの効果を絶賛するので、つられて私も粒ウコンを愛用するようになりました。以来四半世紀、今でも毎日飲んでいます。人間ドックで医師から「酒は控えめに」とやんわり指摘されますが、「やめろ」と言われたことはありません。

 泡盛の奥深さも知りました。10年以上の古酒は、高級スコッチにも引けを取らない味わいだと思います。移り変わりの激しい現代に、熟成の魅力は宝です。

(繁竹治顕、九州国立博物館振興財団専務理事)