<南風>工房のご近所さん


社会
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 雨ばかりだった2月。最後の週は梅雨明けのように晴れた日が続き仕事がはかどった。というのも、土を成形したあとそのまま焼くのではなく、一度十分に乾燥させることが必要なのだ。扇風機などで乾かそうとすると一方向にしか風が当たらず乾き方がばらつく。すると、焼いたときにひびが入ったり形が歪(ゆが)んだりしてしまうのだ。できる限り自然に乾かしたいが、雨が続くと作品がなかなか乾かない。太陽が出て湿気が飛ぶとよく乾き、焼くところまで一気に持ってこられるのである。

 そんな久しぶりに晴れた日、近くに住むおばーが訪ねてきた。先日、器を譲ったお礼にボリュームたっぷりのお弁当を差し入れてくれたのだった。私の工房は古くからの民家が立ち並ぶ住宅地の中にある。自分が工房として使う前は何年も古い空き家だった。そこへ重機が入り、窯小屋が建ち、私が一人陶芸しているときたら、気になってしょうがないのだろう。おじー、おばーが覗(のぞ)きにきては、お菓子や採れた野菜、カーブチーなどを分けてくれる。作業の音などで迷惑をかけていると思うのだが、こうしてよくしてくれることが本当に有り難い。

 また、工房のすぐ近くには沖縄黒線香を作っている線香工場がある。陶芸の焼成方法の一つに「炭化焼成(たんかしょうせい)」というものがあり、私も今取り組んでいるところだ。炭化焼成は炭と一緒に焼いていくのだが、今まではバーベキュー用として売られている炭を自分で砕いて使っていた。その砕く作業がなかなか大変で苦戦していたところ、その線香工場から材料である炭の粉を分けてくれることになった。そして、工場の方から「上等な仏壇があるからそれに合う線香立てと花入れを作ってほしい」とお話があった。上等な仏壇に、上等なお線香、私も心をこめて上等なものを作りたい。
(山本憲卓、陶芸家)