<南風>福島と3・11


社会
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 8年前、湧き水fun倶楽部で最初に発行した資料は、「浦添市湧き水MAP」。最終校正のその日、東日本大震災が起こった。

 3月末に湧き水MAPの配布イベントを予定していたので、あわせて募金活動も行うことにした。震災時、ライフラインのひとつである水道が使えなくなった場合、地域の湧き水が生活を支え、ひいては命を守るということは、阪神淡路・東日本大震災に共通しており、一日も早い復興を願うとともに、地域の湧き水、井戸を日常的に大切にすることが減災につながることを伝える。そして、微力ながらできることを探した。

 夫の両親が福島出身で、毎年のように訪れている親戚のことも気になった。人命や家屋に別条がないことがわかり、安心したものの、実際に行けたのは震災後半年が過ぎた頃だった。伯父さん伯母さんにまず何と言葉をかけよう。そんなことを思いながら家の扉を開けると、開口一番「沖縄におっきな台風来てたみたいだけど、大丈夫だったかね」。伯父さんにそう声をかけられ、私は言葉を失った。

 福島の人は強い。そして優しい。なんてひとまとめにしてはいけない。それはわかっている。その後、何度も訪ねていくなかで伯父さんは「普天間基地っていうのはやっぱり大変なのかね」と私にきいてくる。

 大切なのは、遠くにいても相手の状況を察すること、少しでも生の声をきいて、一緒に考えること、忘れないこと。私は福島にいる親戚からそれを学んだ。

 私ができることは、災害時の教訓を、水を通して伝えること。それは、大切な人々の暮らしを、命を守ることにつながると信じて。

 今年の春に発行された「浦添市防災マップ」には、市内16カ所の湧き水も記載されている。全市町村でこの取り組みが実践されることを願いつつ、被災地への思いも持ち続けていたい。
(ぐしともこ、湧き水fun倶楽部代表)