<南風>きたなかスケッチ


社会
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 北中城村が映画を製作した。「熱田の南島(ふぇーぬしま)」(伝来時期や歌詞の意味も不明。男性のみで構成され、赤い長髪カツラをかぶり、棒を持って踊る伝統芸能)をモチーフにしたコメディタッチの作品だ。なんと本作は動画サイト「ユーチューブ」を利用し、英語・中国語・韓国語のせりふ字幕をつけ全編60分を無料配信中なのである。

 メジャーな存在であるエイサーも、地域によっては参加する青年が減少傾向だと耳にする。「南島」も同じような悩みがあるようだ。さて、本作のユニークなところは、どうにか伝統芸能の継承をしなくてはと、奮闘する若者たちが男性限定の「南島」に、女性も参加させようと先輩たちに怒られそうなアイデアを思いつくところ。しかもその女性を演じるのは、県出身ダンサーとして海外でも活躍中の仲宗根梨乃さん。自分のことが嫌いになったさえない漫画家という役どころである。脇を固める役者陣も池間夏海さんをはじめ、県内外で活躍する演者がそろっており、テンポよくコミカルに演出をしたのは現在、桜坂劇場で上映中の映画「ココロ、オドル」の岸本司監督。

 「正直、伝統を守る理由も、継承する意味も分からないけど、僕の心がそれは大切だと感じているわけ」と劇中に南島保存会のメンバーが一生懸命に語るシーンが印象的だった。それぞれのキャラクターは悩みを抱えながらも、北中城という村にある伝統芸能に触れたことで初めて見えて来る“晴れ間”をのぞかせてくれる。何かに挑戦することで希望が見えてくるし、その頑張りも、きっと誰かが見ているはず。そう信じるだけでも人生の輝きは増すはずだ。そんな光を感じさせる本作は世界中の皆さんに見ていただく価値が大いにある。ぜひ確かめてほしい。
(宮島真一、カフェ映画館「シアタードーナツ」経営)