<南風>見れば分かるさ


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 ゾンビ映画と聞くだけで遠慮してしまう方も多いと思いますが、昨年大ヒットした低予算映画『カメラを止めるな!』が本当に面白い。ただ、どう面白いのか? それを伝えるのが本当に難しい作品でもある。せっかくの面白さをネタバレせずに伝えるために、どこから話せば良いのやら。そういう意味では劇場泣かせな作品でもあるのだが、本作は口コミで全国に広がっていった近年まれに見る周到な96分の娯楽作品に仕上がっている。

 どうしてもシアタードーナツで上映したい思いがあった。5年ほど前に沖縄市の商店街への観光誘致を目的として製作された、ホラーコメディ短編映画『ハイサイゾンビ』という作品に僕も裏方として参加したことがあった。

 その作品は本土でプロとして活躍している特殊メークアーティストも参加しており、当時はメーク助手として携わった下畑和秀さんという方が、実は『カメラを止めるな!』においてチーフを担当していたのだ!それは私にとって相当うれしいことだ。『ハイサイゾンビ』が完成し、イベント上映のために私自身苦労を重ねた結果、シアタードーナツのオープンにつながったところが大いにあったのだ。映画は作るのも大変だが、届ける作業ももっと大変だ。どうか「ホラーは苦手だから」と食わず嫌いにならずに、なぜ日本中で大ヒットしたのかを確かめてほしい。

 『カメラを止めるな!』は「家族愛」「仕事愛」「映画愛」が詰まった作品であり、挑戦を止めない人間ドラマだと断言する。

 去年あたりから気が付いたことがある。私は映画が好きであることは言うまでもないが、本当のところは映画館が好きであり、劇場の暗闇を抜け、余韻にひたる客の充実した表情を見届けることが好きなのであった。
(宮島真一、カフェ映画館「シアタードーナツ」経営)