<南風>安曇野


社会
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 「安曇野に行きませんか」

 去年の今頃、こんなうれしいお誘いがあった。

 琉球大学のさまざまな分野の研究者の方々が結集し2年前に起(た)ち上げた「水の環でつなげる南の島のプロジェクト」で安曇野市のわさび農家から、地下水減少の懸念について問題提起されたことを受けて、安曇野市が信州大学に調査を依頼し、水環境基本計画を制定したことから視察に行くという。

 湧き水fun倶楽部はプロジェクトの一員として発足当時から市民の立場で活動に携わらせてもらい、このような機会に県外の湧水について学ぶことができればとご一緒させていただいた。

 安曇野には日本一大きなわさび田があり、「安曇野わさび田湧水群」として名水百選にも選ばれている。北アルプスからの雪解け水が伏流水となって湧き出し日量70万トンもの湧水量で、水道水源は100%地下水。訪れたわさび農場では、わさびの白い花が一面に広がり、その足元には幾何学模様を描いた無数の水路から清らかな水が滞ることなく流れていた。

 この豊富な水も、水量が1センチ下がると、栽培が難しくなるという。農家の危機感が行政を動かした。水道水源の地下水を守ることは、市民の生活を守ることでもある。

 翌日は隣町にある平成の名水百選「松本城下町湧水群」に足を延ばし、今も水を汲(く)みに来る人が絶えない『源智の井戸』を訪ねた。そこには地域の子どもたちがこの井戸について調べ学んだことが掲示されており、次世代へ大切な水を引き継ぐための教育現場での取り組みを見ることができた。

 市民、企業、教育現場、研究機関、行政とそれぞれの視点で、大切な水の将来を考える。沖縄でも実現できればうれしい。
(ぐしともこ、湧き水fun倶楽部代表 )