<南風>終わりは始まり


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 この春、何かが始まった人もいれば、終わったという人もいるだろう。20年間携わったラジオの仕事を終えた時、ほっとした気持ち半分、組織から抜けた寂しさもあった。それでも仕事で関わった湧き水への興味は尽きることなく、その後もひとりでほろほろと湧き水をめぐる日々は続いた。

 ある日、浦添市でまちづくりに関する活動に助成金を出すという情報を知り、湧き水マップを作りたいと問い合わせたところ、「いいですね。お手伝いしますよ」とうれしい応えに早速、役所を訪ねた。「特に組織である必要はないですが、印刷物に個人名が載るのもなんなので、適当に団体名をつけたらどうですか」というアドバイス。ホントに適当に「湧き水fun倶楽部」という名前をつけて書類を提出した。その話を元仕事仲間の先輩にしたところ、「一緒にやる」と即応答。湧き水めぐりが趣味の夫も加わり、あっという間に立派な団体となった。

 仲間作りも兼ねて勉強会や定例会を企画すると、関心のある方が集まり、今では小学生から80代まで十数人で、湧き水の情報収集と発信の活動を続け、もうすぐ10年になる。ぽっかりあいた穴に「fun(楽しみ)」を詰め込んだら、新しい世界が動きはじめ、想像もつかない楽しい時間を仲間と共有できたのは、私の人生の中で大きな宝となった。

 中学生の頃からラジオが大好きで、当時からこの時期によく耳にする佐野元春のあの歌が頭をよぎる。「あなたはよくこう言っていた 終わりははじまり」

 皆それぞれの人生の中で集団の一員として役割を果たす時間もあれば、ひっそりと、ひとりで歩みだす時もある。その一歩は大きいけれど、新しいことをはじめる時は案外、ひとりの方がうまくいく。

 ひとつの時代が終わろうとする今、新しい時代も、もう目の前にきている。
(ぐしともこ、湧き水fun倶楽部代表)