<南風>映画の効用


社会
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 映画鑑賞は自殺予防になり得ないか。

 10代の自殺者が増えているというニュースを知って、そんなことを思った。ただ、必ず共有することが大事。子どもたちの子守り代わりに映画を見せるだけでは駄目。周りも一緒に見て感想を伝え合う、そのコミュニケーションの中で「考えるチカラ」を育んでくれるはずだ。映画はさまざまな人生を描いているし、世界を知るきっかけをつくってくれる。そして、ポジティブな想像力も育めるはずだ。それを繰り返すことで“不安に振り回される現代社会の孤独者”をつくらないことにつなげたい。

 このコラムを毎度、私の仕事の宣伝に利用するつもりはないが、日々必死だ。シアタードーナツはたくさんの仲間に支えられながら、私個人で経営しており、作品選びはお客さまに喜ばれるテーマとなっているか、試行錯誤する。「コザの街を活性化させるために頑張っていますね」とよく言われるが、活性化のためだけにシアターを経営しているつもりはない。

 私は地域の方が月に一度は劇場で映画を鑑賞するライフスタイルを提案し続けたいし、そうなることでコミュニケーションが増えてほしい。私がセレクトした映画を見た多くの人が、世知辛くない世の中を創造してくれると信じている。そのために持続可能な経営を維持させるのに毎日必死だ。多くの方が来場していただくことで、結果として街の活性化につながれば良いと思っている。

 さて、自殺をしない、させない勇気や元気は劇場の暗闇の中で摂取可能だ。映画館に足を運ぶという行為は一種の旅でもあり、社会に参加することにもなる。認知症予防にも良いはずだ。周りに“孤独者”がいませんか? あなたのお勧め映画でユンタクしてください。そこから「考えるチカラ」が生まれるはず。

(宮島真一、カフェ映画館「シアタードーナツ」経営)