<南風>オオジャコ


社会
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 南ぬ島石垣空港の玄関横には全長1メートルを超える大きなシャコガイの貝殻が置いてあり、観光客などの記念撮影のオブジェとして一役買っている。

 沖縄名物の一つであろうシャコガイの刺し身を初めて食べたのは赴任間もない頃、石垣島のとある居酒屋であった。

 切れ端に鮮やかな色が残っていたりして、やや苦笑いしながらコリコリとした食感を味わった。それにしてもシャコガイはあそこまで大きくなるのかと想像するのは空港にある例のオブジェである。

 すると、「あれは元社員が引き揚げたものですよ」と合いの手を入れてきたのは八重山営業所長である。

 びっくりして聞き返すと、時は2007年、八重山の風物詩でもあるウムズナー捕りの季節、彼がいつものようにタコを狙って出掛けると、沖合200メートルあたりで先端部だけが見えている砂に埋まったオオジャコこと大きなシャコガイを発見。日を改めて、干潮時を狙って海に出掛けては家族や友人と手作業で掘り起こしていった。

 あまりの大きさに貝の蝶番(ちょうつがい)をはずし2分割して、なんとか6日間かけ岸まで引き揚げ、最後はユニック車で持ち帰ったというのだ。重さは優に300キロを超えていたというから、その引き揚げるまでの苦労は相当なものがあっただろう。

 しかも専門家から世界最大クラスで「数千年前の化石では」と言われ、当時はメディアに取り上げられるほど話題になったらしい。しばらくは自宅の庭に飾っていたが、新空港が完成した際、展示させていただいたとのことであった。

 その話を聞いてからは石垣島に降り立つたびに、そのエピソードを添えながら来客をエスコートして、自然豊かな八重山へのワクワク感を高めてもらうのである。
(畔上修一、NTT西日本沖縄支店長)