<南風>桜の季節


社会
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 3月末、桜の花が三分咲きの東京で、夫と娘の大学の卒業式に参列した。桜が満開だった入学式からあっという間の4年だった。はかまに黒いガウンをはおり角帽をかぶった娘の凛とした姿に目頭が熱くなり、走馬燈のように彼女の幼かった頃がよみがえってきた。

 神様から最高のプレゼントが贈られてきたのは24年前。私の体から二つの心音が聞こえてくるというのは、なんとも妙な感覚だった。つわりもおさまり安定期に入った頃、私は人生で一番幸せな時を過ごしたように思う。おなかのわが子に本を読み聞かせ、童謡を歌い、子供服をチクチクと縫い、そしてまだ見ぬ世界が素晴らしいところだと話して聞かせた。

 胎動が感じられるようになる頃には、おなかをポンポンと2回たたいて「調子はどう」と合図をすると、おなかの中から2回キックが返ってきた。3回たたくと3回、そうやって母と娘のコミュニケーションが始まり、母性愛が膨らみ、絆がぐっと深まった。

 生まれ出た娘は、自我が芽生えた頃から、青いオモチャや青い服、何でも青をチョイスするようになる。ちょうど色彩心理を学んでいた私は、同じ色ばかりを選ぶ娘が心配になり「なぜ青が好きなの」と聞いてみた。

 「地球が青いからさー」と3歳児の小さな口から飛び出た答えに強い衝撃を受けた。この子は宇宙人なのか、広い世界観で、いやマクロな宇宙観で物事を捉えているのかもしれない。親ばかな母はその時、この子をグローバルに育てようと意を決し、早速インターナショナルスクールに通わせることに。さまざまな文化背景を持った多人種の友達ができ、同時に日本人としてのアイデンティティーも培われていくことになる。まずはコミニケーション能力のある創造性豊かな子に育ってもらうことが母の願いであった。次回へ続く。
(大木綾子、食空間コーディネーター)