<南風>アジア・ロービング


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 沖縄を訪れる観光客の数は1千万人を突破する勢いです。しかし30年前は期待したほど観光客数が伸びず、経済振興のあり方が議論の的となっていました。

 リゾート法が制定されてホテルやゴルフ場の開発が進む一方で、赤土流出による沿岸の汚染が深刻化し、観光に対する風当たりも強かったと記憶しています。

 沖縄の地理的な優位性を生かしてアジア地域との物流を拡大し、加工業を発展させることで、基地・観光・公共事業という3K経済からの脱却を目指すべきとの声も高まっていました。

 そこで貿易やリゾート開発をテーマに、アジアの先進地域を取材することになりました。

 訪れたのは台湾、香港、シンガポール。去年の米朝首脳会談の舞台になったセントーサ島も訪ねました。こんな取材の仕方を「うろつく」という意味のロービングと呼びます。

 当時、コンテナ取扱量で世界一を競っていた香港とシンガポールの港は、ともに24時間体制。ただし、中国系の労働者が中心の香港は旧正月3日が休み。それに対してシンガポールは365日無休でした。民族が多様な方が、お互いにカバーし合えるというダイバーシティーの大切さに気づかされました。

 台湾では、琉球大学の留学生で私たちの取材で通訳も務めてくれた呂青華さんに、現地の清明祭をリポートしてもらいました。呂さんは卒業が決まって沖縄での就職を希望し、採用してくれる会社もあったのですが、「大学の専攻と一致しない仕事はダメ」と入国管理法をたてに許可が下りませんでした。

 人手不足解消のため入管法が改正され、今月から外国人労働者の受け入れが拡大されました。当時を振り返ると、日本はいささか身勝手ではないかと思うのです。

(繁竹治顕、九州国立博物館 振興財団専務理事)