<南風>隔ての海を結びの海に


社会
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 1月20日に「竹富町制70周年」記念事業の一つとして、竹富町海洋シンポジウムが開催された。「ゆんたく島つなぎ」というサブタイトルがあるように、七つの島の8会場を光回線等のネットワークでつなぎ、同時中継するということもあって、NTTグループにとっても有意義なイベントをお手伝いさせていただいた。

 今から22年前にNTT沖縄支店の中期ビジョンとして「T・F・I(トロピカル・ファイバ・アイランド)」という構想を打ち立て、全国に先駆け光化を進めて沖縄を情報先進地にしようと発信したことがあった。

 当時の沖縄県庁も注目し、県の政策「沖縄県マルチメディアアイランド構想」を支援する役割も含めていた。このビジョンのPRビデオも制作していたので、倉庫で埋もれていたお宝級のビデオを引っ張り出し、今回のイベントのオープニングで使用していただいた。映像の中で説明している女性の髪形や服装は時代を反映しているものの、沖縄の端々に光ファイバーを張り巡らし、先進的な情報化アイランドに変貌させるという構想は今も色あせたものではなく、むしろやっと今、現実のものになりつつある感慨をおこさせるものであった。

 映像中の女性は舞台演出家の富田めぐみさんで、今回の総合司会もされていたことから、昔と今が交錯するようで面白かった。

 各島の会場から伝わる参加者の表情や言葉は距離を克服し、仮想的だが同じ空間を共有できている感覚が芽生えた。ICTを通じて七つの島が一つの島になったような感動が湧き起った。イベント終了後、町長や地元の皆さんと感激冷めやらぬ談義が続き、帰りの夜道では心地よい海風にあたりながら、島の幻想的なあかりとともに20年以上前に先人たちが夢を語り、将来を描いた姿を思い浮かべていた。
(畔上修一、NTT西日本沖縄支店長)