<南風>ネクストステージ


社会
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 「ママ!緊急事態発生!至急連絡ください」。娘からのメッセージに何事かと、心拍数が上がった。

 大学生になった娘はアルバイト代をため、休みのたびに世界各地へリュックサックひとつ背負って貧乏旅行に出掛けた。アラビア語を学んでいたこともあって、その実力を試そうと1回目の旅はモロッコへ。各国在住の友人を訪ね宿泊させてもらうというノープランの無謀な旅に、毎度ひやひや心配で眠れぬ夜が続き、ただただ祈るばかりの母であった。

 「緊急事態」とはベルリンから帰りの飛行機に乗り遅れたというハプニング。再度航空券を購入して、その後も一波乱ありながら1週間後パリから無事に帰国。結局、危険は無かったものの重なるハプニングに心配を通り越して腹も立った。

 高校生時代には県費で南フランスに1年留学し、現地のオーケストラに入団。フランスの音楽祭ではヴァイオリン奏者として路上演奏を楽しみ、オーディエンスから喝采を浴びる。これも琉球新報音楽コンクールをはじめ、さまざまなコンクールに出場した経験が彼女の自信につながっていたのだと思う。異文化の中でも、物おじしないで生き抜く人間力。何より多言語が使えることが強みなのだろう。創造性豊かなチャレンジャーに育った娘には、親として私も育ててもらい、感動と喜び、そして忍耐を教えてもらった。

 この春から新社会人として未知なるステージを歩み始めている娘。平成から令和へと移ろう時代の中で、大きな希望と使命を持って社会に貢献してほしいと願っている。それにしても子供の成長はあっという間だ。ひとまず子育てが終了した私も、次なるステージに向かって心新たに前進しよう。沖縄から世界へ「食卓から広がる心豊かな毎日を過ごすヒント」をお伝えするという使命を持って。
(大木綾子、食空間コーディネーター)