<南風>宮古の歌とアジアのコラボ


社会
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 宮古島の言葉でお母さんのことをアンナといいます。昨年台湾で金曲奨を受賞したCMOのアルバムの中で私が歌っている「アンナイナ」の原曲は宮古島の城辺福里地区に伝わる「アンナ」という古謡で、歌詞には子どもから母親への感謝の気持ちと親子の絆が書かれています。福里の人もほとんど知らない曲を掘り起こすことができたのは、CMOのリーダーで台湾アミ族のスアナさんから次回作のアルバムに宮古島の母親を題材にした伝統曲で参加してほしいと依頼を受けたことがはじまりでした。

 最初はすぐに見つかるだろうと思っていましたが、実際には探し出すまでに何カ月もかかりました。宮古民謡の関係者に協力していただきながらいろいろ文献を調べていく中で約20年前に出版された仲宗根幸市さんの著書からアンナの歌詞を見つけました。

 お母さんへの深い愛がつづられている歌詞に感銘を受け、この曲を絶対に探し出したいという強い気持ちが芽生えました。しばらくして宮古民謡の久貝哲雄先生が所持する資料の中から上田長福さんが歌う音源が見つかりました。台湾のメンバーにその経緯と歌の内容を話すと皆感動し、泣きながら歌を聴いていました。

 静かに眠っていた歌が再び目を覚まし宮古から海を渡り、アミ語のアレンジも加え台湾で評価を得たことで、アジアを視野に活動していきたいと思うようになりました。故郷が道標(みちしるべ)を示してくれたと感じています。

 宮古の歴史や風土、生活の中から生まれた曲の大半は表へ出ることなくその地域の中でひっそり受け継がれ、時代の流れと共に消滅してしまう曲も少なくありません。今後も古謡の掘り起こしを続け、宮古の美しい歌が世界に羽ばたき、たくさんの人に届くよう活動していきます。ミャークヌカギアーグウピスガラシイカディヤァ。
(HIRARA(ひらら)、宮古島出身歌手)