<南風>名水百選


社会
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 日本全国の清澄な水を再発見するとともに、広く紹介することを目的として1985(昭和60)年に環境省(当時環境庁)が選定した「名水百選」。その20年後、水質や水量だけではなく、地域の人達が主体的かつ持続的な環境活動が行われている湧水や川などから選定されたのが「平成の名水百選」である。県内からは、昭和の名水に南城市玉城の垣花樋川が、平成の名水に北中城村の荻堂大城湧水群が選ばれている。

 昭和と平成で選ばれた名水はあわせて200カ所。その中で私が訪れたのは9カ所。日本全国にはまだまだ素晴らしい湧き水があることをあらためて知る。

 私が訪ねた名水で印象深いのが、長崎県島原湧水群。案内してくれた知人は、まず湧き水で冷やした「かんざらし」と呼ばれる白玉団子が食べられるお店に連れて行ってくれた。その後、街中を流れる水路や地元の人が今も生活に利用している共同井戸、その水を使った豆腐屋さん、言い伝えの残る井戸、湧き水で点てた抹茶が飲める茶房等、次々と湧き水の魅力あふれる街を楽しんだ。

 アーケード街にもいたるところに水が湧き、隣あっているのに一方は冷泉、片方は温泉という泉もあり、自由に飲んだり持ち帰ったりできる。地元の人が集う足湯にもお邪魔し、お土産に名水をスケッチした絵葉書セットを買い大満足。案

内してくださったHさんは、「今度は夏に来てください。期間限定で湧き水のかき氷が食べられます」と満面の笑みで見送ってくれた。

 地域の人たちが身近に名水に触れている様子は、その土地の魅力を多いに伝える。垣花樋川は、今も簡易水道水源として各家庭で利用され、北中城では地域行事に湧き水が根差している。

 「令和の名水百選」が選ばれるのはいつの日か。まだまだ沖縄にも魅力あふれる名水が眠っている。
(ぐしともこ、湧き水fun倶楽部代表)