<南風>46秒のサービス


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 春は入学、転勤などで新生活のスタートとなる季節。弊社では「116」でおなじみの電話やインターネットサービスの引っ越し手続きなどを承るコールセンターが繁忙期を迎える。

 以前はWeb検索もなく、新しい居住先で使う電気・ガスなどの申し込みをする際は電話番号を探すにも一苦労で、番号案内「104番」が役立っていた。

 時は1997(平成9)年10月、前年の沖縄県の完全失業率が6・5%となっていた現状もあり、政府による沖縄振興策の一環である雇用創出に協力するため、NTTは東京都内の一部の番号案内を沖縄で受け付けることとなった。

 沖縄県内の通信基盤の整備が進み、技術的に対応可能となっていたことや比較的人件費が安かったことが理由に挙げられた。「500人募集したところ、11倍5500人が殺到した」とニュースで流れ、当時は地域の皆さまから大きな期待を寄せられていたようだ。

 開始当初は、問い合わせを受けてから番号を案内するまで70秒を超えていた。

 東京のお客さまから「沖縄の人間に東京の案内が出来るか」と疑問の声もあった。鉄道のない沖縄で駅名・路線名を必死で勉強し、東京で流行(はや)っているお店など常にアンテナを高くしてサービスの向上に努めた。1年後には平均して39秒、東京と遜色のないレベルに向上し、コミュニケーターは「東京に行かなくても東京に詳しくなるわ」と笑い合う余裕も生まれていた。

 沖縄においては、現在も那覇・名護の2センターで電話番号案内をしており、西日本エリア「30府県」からの電話を受け付けている。

 今は時代の変化とともに年配の方の日常生活に密着した利用が多くなった。お客さまのニーズに応えるべくハートフルな応対を心掛け、平均46秒と変化したコミュニケーションをこれからも大切にしていきたい。

(畔上修一、NTT西日本沖縄支店長)