<南風>常設展示場の魅力と役割


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 私の工房は、民家だったところを借りている。赤瓦屋根の母屋とコンクリート造りの部屋の2棟である。工房として使い始める時、その2棟の間にブロックを積んだ窯小屋を建て、その横のコンクリート造りの部屋を作業場として使うことにした。ここで作業を始めて3年がたとうとしている。しかし、赤瓦屋根の母屋はいまだ手つかずで、中は物置のような状態だ。

 そんな私の工房にも人が訪ねてくることがある。海沿いの県道から少し入り、車がすれ違えないほど細い道を、読谷のやちむんのパンフレットとスマホの地図を見ながら、皆やっとの思いでたどりつく。こうして来てくれてもまだ展示スペースを構えていない私は、母屋から作品を取り出し、作業場の机に並べて見てもらっている。

 だが、作業場であるがゆえ、工具や焼成前の作品が置いてあり、作品に集中できるような環境ではない。器として使うイメージがしにくく、そろそろ真剣に展示場所を考えないといけない。できあがった作品を作業場で見るのと、お店やギャラリーに展示された状態で見るのでは、見方がだいぶ変わる。

 自分の手の中にしかなかった作品が外に出て飾られることによってより客観的に見ることができる。そして、空間がその作品の存在をより引き立ててくれることもある。過去にやちむん市に出店したときには実際にお客さんと話をしながら、手に取ってもらうことの喜びに加え、お客さんから教えてもらうことも多く、生の声をきくことができるのもギャラリーを構える魅力である。

 私は作品をじっくり見てもらえるようなさっぱりしたギャラリーにしたいと漠然と考えている。また自他から見た作品のイメージも盛り込んで、知人にその空間を作ってもらおうと今たくらんでいる。
(山本憲卓、陶芸家)