<南風>架け橋となるために(下)


社会
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 施設からの帰り道、同行した友人が「首里奨学母の会」について話してくれた。1960年代、首里の母親たちが経済的に勉学を続けるのが困難な子どもたちのために、豆腐一丁のお金を節約し、奨学金にしたというのだ。

 早速、先輩方を見習い、現代版の豆腐一丁を千円に設定し、児童養護施設出身のその男子学生が卒業するまで、毎月仕送りをするための寄付集めに奔走した。

 娘と一緒に考えた会の名前は「にじのはしファンド」。虹色のようにいろんな可能性を持つ子どもたちと応援したい大人たちの架け橋となって、進学を経済的にサポートすることで子どもたちの未来に投資するという思いを込めた。

 家族、親戚、友人、職場、高校同窓会や小学校の飲み会など、どんな集まりでも賛同者を募った。思い立ったら即行動という私の習性を知っている、面倒見のいい高校からの友人は「あんた一人では大変だから手伝うさ」と、快く巻き込まれてくれた。

 彼女の大きな助けに感謝している。活動の輪は県内外に広がり、今まで44名の子どもたちを応援してきた。事務局運営を担ってくれる友人たち、これまで磨いたスキルを惜しみなく提供するシニアメンバーもいて、とてもありがたい。

 さて、前述の男子学生は支援者からの温かい仕送りのおかげで、無事に大学を卒業し、念願の福祉職につき、結婚し3児のパパになっている。

 しかし、彼のように順調に卒業し就職している子は少ない。入学後に心身の不調が現れたり、経済的困難で中退する学生たち。決断の前に、相談してくれていたらと思うことが何度もあった。そこで、彼らが安心して頼れる居場所をつくる「実家プロジェクト」を始めている。温かい食事と寝転がれる空間。架け橋としての役割はまだ続く。
(糸数未希、NPO法人にじのはしファンド代表理事)