<南風>今時の若者言葉


社会
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 「はじめに言葉ありき」

 これは聖書に記されている言葉である。なぜ、私が今それにこだわっているのか。

 最近の言葉の乱れは、私たち障害者や高齢者にとって、また通訳を仕事としている人にとっても頭を抱えてしまう問題である。特に詩や短歌を身近にしている私には気になって仕方がない昨今である。目的語をそこそこにし、短縮に短縮を重ねる、今時(いまどき)の若者言葉の傾向に懸念を感じている。

 このような今時の言葉は、言語障害者にとって最悪の状態になる場合がある。身体障害者向けの携帯型意思伝達装置「トーキングエイド」を使用している友人は、タクシーに行き先を告げたが、若いドライバーは、その今時の言葉で確認して走りだした。止めようにも止められず、とんでもない所に下ろされたという。すぐに言葉にできない者の悔しさが身にしみる。

 昨年、縁あって芸人の村本大輔さんと出会った。彼は不思議にお笑いの中に今時の言葉を入れず、自分流のネタを取り入れながら滝のようにしゃべり、お笑いにしている。今時の言葉を入れないのは無意識なのかもしれないが、私は心地よく笑うことができる。

 言葉や笑いは万人のものであってほしい。障害の有無にかかわらず、共に生き共に笑い合う仲間でありたいと願い、この度「笑う人魚たち」というイベントを29日、某市民会館で開催することになった。

 イベントでは仲村颯悟監督の映画「人魚に会える日」を上映する。言葉を持たない人魚と人とをつなぐ作品で、若い仲村監督は、言葉にならない沖縄の声を感じてほしいと言う。

 障害者と村本さんやまーちゃんたちとのトークショーもある。このイベントを機に言葉の大切さが未来につながっていくことを、企画者の一員として望んでやまない。
(木村浩子 歌人、画家)