<南風>陶芸を身近に


社会
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 去る6月8日は、5月末に焚(た)いた恩納村にある穴窯の窯(かま)出しの手伝いをした。私は抹茶椀や酒器を入れさせていただいたのだが、どれも色や質感の良い変化が出ていて、眺めているとその色の渦に吸いこまれいつまでも眺めていられる、惚れ惚れするような表情だった。自分の作った窯でこれが出すことができればと強く思った。改めて窯主さんのすごさを感じた。

 薪で焼くことで変化するこの自然な表情に私は魅了され、また薪窯を焚きたい衝動にかられるのだ。抹茶椀を眺め時を忘れていると、一本の電話がかかってきた。(ちなみにこの抹茶椀、そばに置いておくと仕事にならないので、今は自宅の食器棚に鎮座している)。

 電話は陶土を作っている方からだった。まさに薪窯についての話だった。この方も薪窯に魅せられている一人である。沖縄の土を製土して、沖縄の作り手に土を提供していくうちに、薪窯とその作品に出会い、心奪われ、窯を焚くとなればどこへでも駆けつけて手を貸してくれるような方だ。

 沖縄には20もの薪窯があるにも関わらず、もっと薪窯の作品にも光が当たっていいのではないか、もっと薪窯の作品を世に出していこうという内容だった。若手の私たちにその思いを懸けてくれていることが有難く、次の窯焚きへ思いが一層高まった。

 私の連載も今回で最後だが、だいたい窯焚きについて書いていた。火の魅力、それを操る人の思い、その場の雰囲気、そこから生まれる作品、自分にとって窯焚きは特別なものだと改めて考えさせられた。マニアックな内容につたない文章で読みにくかったと思うが、陶芸をより身近に感じていただけたら本望だ。県芸の作品展、詳細をお知らせできないまま終わるのが残念だが、来年頃の開催を楽しみに待っていてほしい。
(山本憲卓、陶芸家)