<南風>月に1度は映画館へ


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 映画を鑑賞して心が奮い立つことが大いにある。政治・経済・福祉・教育・芸術など映画には多くの要素が詰まっている。今、社会に圧倒的に足りないのは想像力だと感じている。日々、飛び込んで来るニュースをわれわれはどう受け止めればよいのか? 何かできることはないのか?

 シアタードーナツで上映する作品には、私なりの選定基準がある。それは、鑑賞者の心が奮い立つと信じられる作品だ。月に1度でいいから、読者の皆さまが人生のほんの2時間弱を映画館で過ごしてほしい。

 この提案は私のライフワークである。家のテレビではなく、パソコンやスマホではなく、魂を込めて制作された“劇場用映画”を暗闇の中で体感することがいかに素晴らしいことか。観賞後のお客さまの余韻に浸った顔に出逢(であ)えることが、私にとっての最高の生き甲斐(がい)となっている。大袈裟(おおげさ)な表現かもしれないが、映画館に足を運ぶという行為自体が社会貢献にさえ成り得るとまで考えている。

 それは旅にも似ている。旅の土産話は周囲とのコミュニケーションを活性化させるだろう。映画が持つテーマやメッセージが、気になっていたことをクリアに代弁していることもあるだろう。そんな作品に出逢えたら豊かな社会を創造できるのではないか。想像力の欠如を埋めるには映画鑑賞は有効だ。

 映画『人生フルーツ』のアンコール上映が7月から始まる。この作品は、人間は次世代に何を遺(のこ)せるのか? 何を遺したいのかを問いかける。「僕はもう手遅れだ」。この言葉は本作を鑑賞した年配の男性の感想である。この言葉が何を意味するのか。劇場の暗闇の中で希望の光と、社会に参加する価値を見いだしてほしい。携帯電話の充電ばかりしないで、心を充足する時間をつくろうぜ。
(宮島真一、カフェ映画館「シアタードーナツ」経営)