<南風>沖縄とふるさと北陸


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 年初には筆が続くだろうかと不安を抱えつつ初稿を出させていただいたが、おかげさまで今回が最終話となる。締めくくりは私のホームタウンであり、社会人のスタートを切った地である北陸地方と沖縄にちなんだエピソードを綴(つづ)りたい。

 NTTグループのOB・OGの会なるものとして、その名も電友会というのがある。昨年、この会主催で「心の交流」と題して、石川県金沢市へ遠征という企画に現役ながら便乗させてもらった。新人時代からお世話になった北陸の大先輩たちと、現在、沖縄で温かく迎えてくれる楽しい先輩たちに囲まれるとあって、出発前から嬉(うれ)しさと懐かしさと緊張感が同時にこみあげてきた。

 事前に何をするかあまり知らされずに参加したのだが、現地で合流してみるとメインイベントは芸能合戦であった。沖縄の先輩たちは芸達者ばかりなので、正直沖縄勢に分があるだろうと踏んでいたが、北陸勢もホームでの開催の利とばかりに、衣装や小道具も含め気合が入っていた。

 沖縄勢は北陸観光も兼ねていたせいか、舞台では空手道着のまま次は三線を鳴らしたりの間に合わせ感で対抗していて、笑いを誘う微笑(ほほえ)ましい光景であった。

 しばらくお客さま気分で観覧していたら、自分も舞台に引っ張り出され、つたない唄や三線で即興をさせられ冷や汗をかいたが、全員と一体感を味わえ楽しい時間であった。最後は懐かしくもある、金沢勤務時代に参加した百万石まつりの「百万石音頭」を全員で踊って締めくくった。

 芸能が沖縄と北陸の懸け橋となり、双方の先輩諸氏に温かく迎え入れてもらい、熱いものがこみあげ涙が溢(あふ)れそうになった。

 この夜は、昔の同僚たちと金沢の街へ繰り出し、感激冷めやらぬこの出来事を肴(さかな)に盃を手放せず、上機嫌の宵が更けていった。
(畔上修一、NTT西日本沖縄支店長)