パイカラヌカジヌ サヤサヤチ スダースキナリ ブーギヌ パーユナ ディ(南風がサヤサヤと涼げにサトウキビの葉をなで)
宮古島出身のアーティスト下地イサムさんのデビュー曲「我達が生まり島(ばんだがんまりずま)」の一節だ。
2002年に彼の方言の歌を聞いた時の衝撃たるや。まるで映写機が回るように宮古島を映しだし、心をゆさぶられた。
子どもの頃、両親をはじめ周りの大人は皆、方言を話していた。私は使わなかったがそのほとんどを理解していた。イサムさんの歌を聞き、島の風景、両親の言葉やおばあのしぐさ、幼い頃の自分に会い、方言と自分は切り離せないものだと実感した。
30年暮らした東京から5年前に東京出身の夫と宮古に帰ってきた。両親の会話を毎日耳にした夫は「二人はなんで喧嘩ばかりしているの」と小声で聞く。「喧嘩していないよ、あれが普通の会話」と言うと驚いていた。宮古方言は怒っているように聞こえるらしい。
方言といえば、宮古島には、大人気の方言大会がある。チケットは即日完売。マティダ市民劇場は毎回満席になる。
8組の発表者が登壇し、子どもの頃の思い出や方言と共通語の違い、地域の歴史の話などなど、それぞれが想(おも)いのたけを話す。普通の市民が自分の「すまふつ(シマの言葉)」で語る話に会場は大いに沸く。今や出場するのは地元の人ばかりではなく、4年前にはフランス人が市長賞を受賞した。今回は、東京出身の若者も東京から参加をする。
私たちは、島外の人からも方言の良さ、魅力を教えてもらっている。方言を理解できるというのは豊かであり幸せだと思う。
「第26回鳴りとぅゆんみゃ~く方言大会」は7月13日に開催。会場には、豊かな時間が流れることだろう。
(松谷初美、宮古島市文化協会事務局長)