<南風>宮古上布の手技のかぎさ

 宮古の小さな川、崎田川の源流からとうとうと清らかな水が流れている先に、水草が生い茂りたくさんのトンボが舞っている。トンボの羽は薄く緻密で軽い。宮古上布は、そのトンボの羽のようだと例えられる。

 宮古上布は、苧麻(ちょま)から糸を績み、図案作成、染め、織り、最後の砧(きぬた)打ちをして仕上げるまで50以上の工程を経て作られる。戦後、復帰前の頃までは千反ほどの生産があったようだが、苧麻糸を績(う)む人の高齢化などで生産反数は年々減少している。しかし、宮古上布に魅せられ携わる若い人も増えてきているようだ。

 島の伝統工芸だというのに、恥ずかしながら、宮古上布について何も知らなかった。5年前に宮古に帰ってきて宮古島市伝統工芸品センターの展示を見たり、ワークショップなどに参加したり、少しずつ知るようになった。糸績みの技術の高さ、図案の緻密さ(図柄は島の生活の中にある、豚の餌箱のトーニ、鳥、枡(ます)、亀甲、銭玉など)、糸括(くく)り、染め、織り、砧打ちなどの手技のかぎさ(美しさ)よ。それらがひとつのハーモニーとなり完成となる。その布は、ためいきが出るほど美しい。高額というのもうなずける。工程を頭でなぞってもどうやったらそこにたどり着くのか。いまだ私の頭の中は理解できていない。

 3年前、清水の舞台から飛び降りるつもりで宮古上布の古布で作られたワンピースを買った。袖を通した時、トンボの羽といわれるゆえんを肌で感じた。購入以来、宮古をアピールするイベントでは、毎回のように着ている。「宮古上布ですか?」と訊(たず)ねられると誇らしい気持ちになる。「はい」と返事をし、くるりと周って見せ、手技の美しさをがーりている(自慢している)。
(松谷初美、宮古島市文化協会事務局長)
*参考資料:『宮古上布~その手技~[改訂版]』宮古上布保持団




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