<南風>甘蔗と甘藷


社会
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 7月13日早朝、掲載された「南風」を読んでいると、1通のメールが入った。

 「サトウキビは『甘蔗』。『甘藷』はサツマイモよ」

 やっちまった! 小さいころからちょっとあわてん坊で、物忘れも多く、幼馴染(おさななじみ)からは「ウフソー」と言われていた。何度も確認したつもりだった。まさか、記念すべき「南風」第1回で間違えるとは。

 ワープロやメールの普及で変換ミスはよくあるようだ。「年間変漢ミスコンテスト」もある。昨年の年間変漢賞は、「馬食い家内が象サイズになった」。画像の加工をする際にうまく取り込めない状況で打った「うまくいかない画像サイズになった」の変換ミスだ。また、「日本の秘境100選」→「日本の卑怯100戦」もある。思わず手を叩(たた)いて笑ってしまったものだ。

 しかし、サトウキビ畑とサツマイモ畑では見える景色や聞こえる音、漂う匂いが全く違う。単なるワープロの変換ミスでは済まされない。事実を報道する新聞やマスコミで同音異義語の誤植が許されないのは当然だ。一字一字の意味を大切にする俳句の世界でも同じことがいえる。

 経営でも言葉の意味、定義付けを経営者と社員が共有することがとても大切だ。経営者が発した言葉を、聞いている社員がそれぞれ違う意味で聞いていたら、船は違う方向に進んでしまうのだ。決めた期日に目的地に着くには、今どこにいるのか、これからどこに向かうのか、そして正確な羅針盤を共有する必要がある。

 一面のサトウキビ(甘蔗)畑で、ざわわという音を聞いて、サツマイモ(甘藷)畑の音ですねとは言わないはずと思っている。ここに落とし穴がある。経営の現場でも同じようなことが起こっていないか? 改めて、事物を冷静に再確認することの大切さを知った。

(稲嶺有晃、サン・エージェンシー取締役会長)