<南風>サンゴの保全、再生


社会
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 観光客も地元の人々も愛してやまない沖縄。この島の持つ圧倒的な美しさはさまざまな恩恵をもたらし、観光産業は沖縄県全体の成長を支えています。観光客は澄んだ空気、青く透きとおった海、そして素晴らしいサンゴ礁を楽しもうと沖縄にやって来ます。

 3月5日の「サンゴの日」に、私は長浜善巳恩納村長、山城正巳恩納村漁業協同組合長と共に、真栄田岬近くの沖でサンゴの苗の植え付けをさせていただきました。サンゴは繊細な生き物で成長に何年もかかります。またサンゴ礁には多くの動植物や微生物が集まり、複雑でデリケートな生態系を形成しています。悲しいことに、現在世界中で多くのサンゴが死滅していますが、これは気候変動や海水温の上昇による影響、マイクロプラスチックごみの蓄積と、天敵であるオニヒトデの大量発生など複数の要因によるものです。

 この問題にOISTの研究者たちも立ち向かっています。天然サンゴの構造や詳細な食害の過程を解明するなど、研究は大きな成果を上げています。これらが、サンゴ礁保全対策につながるかもしれません。サンゴの養殖を行うことで、サンゴの成長に必要なものを理解することができます。熱意ある恩納村漁協の方々との協働により、養殖サンゴは多くの点で天然サンゴと似通っていることや、壊れやすいサンゴ生態系の再生に活用できることがわかりました。

 現在、世界中にはさまざまな問題がありますが、環境保全、再生可能エネルギーの開発、予防医学に視点を置いた医療など、科学が貢献できることはたくさんあります。科学的知見が深まれば深まるほど、私たちが抱える問題を解決できる可能性は高くなります。誰もが平和で安全で健康な暮らしができる社会のために科学は重要な役割を果たすことができるのです。
(ピーター・グルース、沖縄科学技術大学院大学学長)