<南風>お話は生まれたい。


社会
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 「絵本をつくる」というと、お話を考えてそれに合わせた絵を描いて、と考える。お話なんて簡単に浮かばない。お話に合った絵を描くなんてできない。そんなの無理無理ってなる。

 私たちの絵本づくりは、緩やかなテーマを決めて大きな画用紙に思いつきをどんどん描く。「雨」がテーマなら、雨ってどんなふうに降るかな、雨が降ったところには何がいる? どこに降るかな? などと問いかけて、一緒にわいわい言ってイメージを膨らませる。それから、大きな楕円(だえん)が描かれた画用紙を自分で選んで、頭のなかに浮かんだものを描く。だから、描けなくて困るということがあんまりない。

 大きな楕円は、天地を分けている。といっても、楕円の内側も外側も両方が天になる。線が地面で、外側も上、内側も上。説明しても子どもは大抵そんなの無視しちゃうし、楕円が大きな池になっていたりする。それはそれでいい。真っ白な画用紙に描くより、描き始めるのが楽にもなる。

 二次元の絵ができあがったら、切って折ってたたんで絵本の形にして、それからお話を見つける。表紙はどこにする? 主人公は誰にする? この蛙(かえる)? 名前は何? へえ、これは何?UFOなの? じゃあ蛙がUFOに乗って宇宙に行くお話にする? そうして、ページを繰りながら、新しい登場人物に出会って旅の話は進む。二次元の絵は折りたたまれて、時間の流れとともに、物語によって三次元になる。

 物語は、つくろうとしなくてもそこにある。生み出そうとしなくても生まれたい。それは私のいる演劇グループ、ウニココでも満月即興でも共通した信念のようなもの。たくさんの物語を抱えて、人はいる。そうした物語を一緒に見つけるのが好きだ。絵本をつくろう。21日、那覇市曙の「まるたま」で。音楽付き。
(上田真弓、俳優、演出家)