<南風>3勝11敗


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 先日、日曜朝のラジオ番組にゲスト出演した。パーソナリティーは、かってのブログ仲間。失敗談や仕事で大切にしたいこと、これからの抱負などあっという間の1時間だった。

 ブログを始めたのは2005年。タイトルは「稲嶺有晃の3勝11敗」。ごく普通の真面目で気が弱くてシャイなサラリーマンが、失敗続きの上で、偶然にもいろんな人との出会いと、環境が上手くマッチして、経営者になってしまった。そんな社長の独り言だ。

 県庁からりゅうせきを経て現在の広告業までかかわってきた事業は20を超える。ブログ開始までに14。主な事業を上げると、米国での金融、不動産開発。帰国後の住宅販売、携帯電話、水処理、ボイラー、事務用品、保険、ビジネスホテル、懐石料理、赤土汚染防止など、多岐にわたる。戦績は3勝11敗。大相撲でいうと負け越しだが、この11敗から学ぶものは多かった。

 特に米国での金融・不動産開発投資での失敗は大きかった。バブルが崩壊し、借入枠も縮減され、借入金の返済に追われる日々。社員をリストラし、再建を図るもかなわず、会社を整理し撤退。今でも胸が痛む。事業構想力、情勢判断力、決断力、人間力など経営者の力量不足を痛感した。

 その後も新規事業に挑戦しては、はね返される日々が続いた。当時の社長からこう言われた。「りゅうせきの油を県民の皆さんに使っていただいている。食堂のおじい、おばあもうちのお客さんだ。競合するような事業はやるな。沖縄にない新しい事業、新しい価値を提供できる事業をやるんだ」と。投げ出すわけにもいかないし、「参ったなぁ」というのが本音だった。そんな時、「敗」の字を見ていると「拝」の字が浮かんできた。トライしたから経験が積め、今の自分がある。感謝の思いが湧いてきた。挑戦は今も続いている。
(稲嶺有晃、サン・エージェンシー取締役会長)