<南風>物語を紡いでみませんか


社会
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 「大昔、宮古の島に人の世の出はじめの時、月の神と天の神は、『人間の命を幾代かけても末永くつながせよう』と思召され、アカリヤ仁座(にざ)をお呼びになって、水を入れた二つの担桶(たご)を授けて『人間にはスデ水を浴びせ、常世の命をあらせ。蛇にはスニ水を浴びせよ』と御情けを人類に授けようとなされた」。これは、宮古に古くから伝わる伝説「アカリヤ仁座」の冒頭部分。(新版『宮古史伝』慶世村恒任著より抜粋)

 続きはというと、結局、人間はスデ水(脱皮や脱殻のごとく永久の生命をつなぐ水)を浴びることはなかったが、節の新夜にアカリヤ仁座が人間のことを思い、スデ水を撒くので、その日に井戸水を浴びると若返るようになるという話だ(蛇はスニ水(死水)をかけられるはずがスデ水を浴び脱皮するようになった)。この水のことを若水と言い、うちの明治生まれのおばぁも、節の時にはこの若水を汲み、浴びていたと話していた。

 宮古はスポーツの島として有名だが(トライアスロン大会は35回も続いている)、昔から伝説や民話、英雄叙事詩等が多く語り継がれてきた豊かな文化を持つ島でもある。人は文字を持たない頃から物語を作り、語り継いできた。いつの時代でも生きることは困難なことが多い。その中で物語の果たす役割は大きいと思う。

 そんな宮古から「宮古島文学賞」(宮古島市文化協会主催)が平成29年に生まれた。協会では今年度、第3回「宮古島文学賞」の作品を募集している。募集作品は短編小説で、テーマは「島」。島は宮古諸島に限らず、どこの島でも架空の島でもよく、ジャンルは問わない。応募資格も不問である。応募期間は10月1日から31日まで。

 あなたの「島」の物語を紡いでみませんか?
(松谷初美、宮古島市文化協会事務局長)