<南風>外国の友だち(2)


社会
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 20年前、スペインの南の端で、アメリカ人のアリソンと友だちになって一緒にジブラルタル海峡を渡り、モロッコを旅した。3食ラクダ付き、10日間のサハラ砂漠の旅もした。

 大柄で、そのためにバレエからコンテンポラリーに転向したアリソンは、Tシャツをきれいにくるくる丸めて上手にバッグに詰める。日本人の私は隣でぎゅうぎゅう押し込む。

 最初の自己紹介のときに、私が日本の沖縄から来たと言うと、アリソンはすぐに、沖縄なの? うち(アメリカ)が迷惑かけててごめんね、と言った。日本の沖縄は多くの米軍が駐留する場所だと彼女は知っていた。もう後ろ暗いことが多すぎて、極力自分のことをカナダ人って名乗ってる、と苦笑いした。彼女とは馬が合うと思った。

 それから一緒に、賑々(にぎにぎ)しい市場や、そこに流れる音楽、クスクスや、丸い平らなパンや、つぶしたばかりの羊や、漆黒の闇や、ナツメヤシのお酒、一面を白と黒に塗り分けていく砂漠の月の出、朝の全部不満なラクダや、オアシスでの水浴びや。いろいろあってたくさん笑った。

 帰国して、葉書のやりとりは数回で途絶え、そのままになったのだけど、最近、初めて学生にアリソンの話をした。沖縄をめぐるデマやヘイト、歴史を改ざんする動きについて授業で話しているときに。ソウルで慰安婦について聞かれて私は謝り、沖縄から来たと言うとアメリカ人に謝られ、どちらとも友だちになった。それは歴史の事実や今のことをちゃんと知っていたからできたよと話した。

 それで、その日の夜にSNSでアリソンから連絡があった。あなたを見つけた! 写真ですぐにわかったよ。ハロー、マイフレンドフロムザパスト。こんにちは、過去からの私の友だち。そして、私たちはまた会おうと約束をした。
(上田真弓、俳優、演出家)